- 2026年9月22日
脂質異常症の治療薬とは?薬の種類と続ける理由を循環器専門医が解説 その2
姫路市飾磨区の「きぬたにクリニック内科・循環器内科」院長の絹谷です。
前回の記事では、脂質異常症の診断基準や原因、遺伝との関係、食事のポイントについて解説しました。
今回は、脂質異常症の「治療薬」についてお話しします。
「食事に気をつけているのに、コレステロールが下がらない」
「薬を勧められたけれど、どのような働きがあるの?」
「数値が下がったら、薬はやめてもよい?」
このような疑問にお答えしながら、主な薬の特徴と、治療を続ける意味について説明します。
どのような場合に薬が必要?
脂質異常症の治療では、食事や運動などの生活習慣の改善が基本です。そのうえで、十分に数値が下がらない場合や、心筋梗塞などの危険性が高い場合には、薬による治療を検討します。
薬が必要かどうかは、LDLコレステロールの数値だけでは決まりません。年齢、喫煙、高血圧、糖尿病、腎臓病、これまでにかかった病気などを合わせて判断します。
特に、心筋梗塞や狭心症を起こしたことのある方や、家族性高コレステロール血症の方では、早い段階から薬物療法が必要になることがあります。
治療の目的は、将来の心筋梗塞や動脈硬化による脳梗塞を予防することです。
症状がなくても、将来の健康を守るために治療する意味があります。
参考:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
LDLコレステロールを下げる薬
① スタチン:治療の中心となる薬
スタチンは、肝臓でコレステロールが作られるのを抑え、血液中のLDLコレステロールを減らす薬です。
代表的なものには、ロスバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチンなどがあります。
スタチンは、LDLコレステロールを下げる効果に加え、心筋梗塞などを予防する効果が多くの研究で確認されており、薬物療法の中心となっています。
目標とする数値や体の状態に合わせて、薬の種類と量を選びます。
② エゼチミブ:腸からの吸収を抑える薬
エゼチミブは、小腸からコレステロールが吸収されるのを抑える薬です。
肝臓に働くスタチンとは作用する場所が異なるため、スタチンだけでは目標値に届かない場合に、組み合わせて使います。
「作られる量を減らす」「吸収される量を減らす」という2つの働きで、LDLコレステロールを下げます。
治療の状況によっては、エゼチミブを単独で使用することもあります。
③ 注射薬:さらにLDLコレステロールを下げたい場合に
LDLコレステロールを下げる薬には、飲み薬に加えて注射薬もあります。代表的なものが、レパーサとレクビオです。
どちらも、コレステロールの処理に関わる「PCSK9」というたんぱく質に作用し、肝臓が血液中のLDLコレステロールを取り込みやすくします。
レパーサ(一般名:エボロクマブ)
PCSK9の働きを直接抑える薬です。一般的な高コレステロール血症や家族性高コレステロール血症のヘテロ接合体では、通常、2週間に1回、または4週間に1回注射します。
LDLコレステロールを強力に下げる働きがあり、心血管疾患のある方を対象とした研究では、心筋梗塞などの発症を減らす効果も確認されています。
レクビオ(一般名:インクリシラン)
肝臓でPCSK9が作られる過程を抑える薬です。初回と3か月後に注射し、その後は6か月ごとに投与します。効果が長く続き、注射の回数が少ないことが特徴です。
これらの注射薬は、主に家族性高コレステロール血症の方や、心筋梗塞などの危険性が高く、十分な飲み薬の治療でも目標値に届かない方などで検討します。
使用できる条件や投与間隔が異なるため、これまでの治療経過や通院のしやすさなども踏まえて選択します。
参考:日本動脈硬化学会「PCSK9阻害薬の適正使用について」
④ ベムペド酸:新しい飲み薬の選択肢
ベムペド酸は、スタチンとは異なる段階で、肝臓のコレステロール合成を抑える飲み薬です。
スタチンだけでは効果が不十分な場合や、スタチンによる治療が適さない場合に使用します。
LDLコレステロールを下げる薬の選択肢が増えたことで、一人ひとりの状況に合わせて治療を組み立てられるようになっています。
中性脂肪を下げる薬
中性脂肪が高い場合は、食べすぎや飲酒、糖分の多い飲み物などを見直すことが重要です。そのうえで、数値や合併する病気に応じて薬を検討します。
フィブラート系薬・ペマフィブラート
フェノフィブラートなどのフィブラート系薬や、ペマフィブラートは、脂質の代謝を調整して中性脂肪を下げる薬です。
中性脂肪が高い状態が続く方などで使用を検討します。特に著しく高い場合には、急性膵炎の予防も考慮して治療を進めます。
EPA製剤・EPA/DHA製剤
魚の油に含まれるEPAやDHAを医薬品として用いたもので、主に中性脂肪を下げる働きがあります。
中性脂肪の値や、ほかに使用している薬などを踏まえて、治療に取り入れます。
LDLコレステロールと中性脂肪の両方が高い場合には、通常はLDLコレステロールの管理を優先し、中性脂肪の程度に応じて治療を組み合わせます。ただし、中性脂肪が著しく高い場合は、その治療を優先することもあります。
参考:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
薬を飲み始めても、食事や運動は大切です
薬による治療と生活習慣の改善は、両方を続けることが大切です。
食事の見直しや適度な運動は、脂質の改善だけでなく、体重や血圧、血糖の管理にも役立ちます。
一方で、生活習慣に十分気をつけていても、体質によって数値が下がりにくい方がいます。そのような場合には、薬を取り入れて目標値を目指します。
「薬が必要になったのは努力が足りなかったから」と考える必要はありません。生活習慣と体質の両方を踏まえ、ご自身に合った治療を続けていきましょう。
数値が下がったら、薬はやめてもよい?
薬を飲んで数値が下がると、「もう治ったのでは」と思われるかもしれません。
ただし、数値が良くなっているのは、薬が働いている結果であることも多く、やめると再び上がる場合があります。
薬を始めたからといって、必ず一生同じ薬を飲み続けると決まるわけではありません。生活習慣や体重の変化、検査結果などに応じて、治療内容を見直します。
一方、家族性高コレステロール血症の方や、心筋梗塞を起こしたことのある方などでは、長期的にLDLコレステロールを管理することが重要です。
薬を続けるかどうかは、現在の数値だけでなく、治療前の状態や将来の病気の危険性も含めて判断します。
数値が下がったからと自己判断で中止せず、主治医と相談しましょう。
参考:日本循環器協会「脂質異常症」、国立循環器病研究センター「家族性高コレステロール血症について」
ご自身に合った治療を、一緒に考えましょう
脂質異常症の薬は、LDLコレステロールと中性脂肪のどちらが高いか、どの程度下げる必要があるかによって選び方が変わります。定期的な血液検査で治療の効果を確認しながら、一人ひとりに合った薬の種類や量を調整していきます。
姫路市飾磨区の「きぬたにクリニック内科・循環器内科」では、脂質異常症(高脂血症)や高コレステロール血症について、食事・運動のアドバイスから薬による治療までご相談いただけます。健康診断でLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が高いと指摘された方、家族性高コレステロール血症が気になる方もご相談ください。
また、高血圧・糖尿病などの生活習慣病をはじめ、不整脈・狭心症・心不全などの循環器疾患、睡眠時無呼吸症候群についても診療しています。動悸や息切れ、足のむくみ(浮腫)、いびきなど、気になる症状がある方もお気軽にご相談ください。
「自分には薬が必要なのか」「今の治療で十分なのか」といった疑問を一緒に整理し、無理なく続けられる治療を考えていきましょう。