- 2026年7月27日
- 2026年7月20日
脂質異常症とは?原因・食事・運動・治療について循環器専門医が解説 その1
姫路市飾磨区の「きぬたにクリニック内科・循環器内科」院長の絹谷です。
健康診断で「LDLコレステロールが高い」「中性脂肪が多い」と指摘されても、体調に変化がないため、そのままにしている方はいませんか?
脂質異常症は、ほとんどの場合、自覚症状がありません。しかし、知らないうちに動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気につながることがあります。
今回は、脂質異常症の診断基準、原因、遺伝との関係について、循環器専門医が分かりやすく解説します。
脂質異常症とは
脂質異常症とは、血液中の脂質が基準値から外れた状態です。
主に、次の3つの異常があります。
- LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が高い
- HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が低い
- トリグリセライド(中性脂肪)が高い
LDLコレステロールには、肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割があります。しかし、血液中に増えすぎると血管壁へ入り込み、動脈硬化の原因となります。
HDLコレステロールは、血管の壁にたまった余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻す働きをします。
中性脂肪は体を動かすためのエネルギー源ですが、増えすぎると肥満や脂肪肝、動脈硬化と関連します。著しく高い場合には、急性膵炎の原因になることもあります。

脂質異常症の診断基準
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、脂質異常症の診断基準を次のように定めています。
LDLコレステロール
- 140mg/dL以上:高LDLコレステロール血症
- 120~139mg/dL:境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール
- 40mg/dL未満:低HDLコレステロール血症
中性脂肪(トリグリセライド)
- 空腹時150mg/dL以上:高トリグリセライド血症
- 随時採血175mg/dL以上:高トリグリセライド血症
non-HDLコレステロール
- 170mg/dL以上:高non-HDLコレステロール血症
- 150~169mg/dL:境界域高non-HDLコレステロール血症
ただし、診断基準を超えたからといって、全員が同じ治療を受けるわけではありません。
実際の治療目標は、年齢、喫煙、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、家族歴、心筋梗塞や脳梗塞の既往などを考慮して個別に決めます。
なぜ脂質異常症を治療する必要があるのか
血液中のLDLコレステロールが増えると、コレステロールが血管壁へ入り込み、プラークと呼ばれる隆起が形成されます。
プラークが大きくなると血管が狭くなり、血流が悪くなります。さらに、プラークが破れると血栓ができ、血管が突然詰まることがあります。
これが心臓の血管で起これば狭心症や心筋梗塞、脳の血管で起これば脳梗塞につながります。足の血管に起これば、歩行時の足の痛みや壊疽を生じる末梢動脈疾患の原因になります。
脂質異常症の怖いところは、このような動脈硬化が自覚症状のないまま進行することです。
胸痛や息切れなどの症状が現れた時点では、すでに動脈硬化が進んでいる可能性があります。症状がないうちから、健診結果を確認し、必要な対策を始めることが大切です。
脂質異常症の原因は生活習慣だけではありません
脂質異常症は「食べすぎや運動不足が原因」と思われがちですが、実際には、遺伝的な体質と生活習慣、年齢、病気、薬剤などが複雑に関係しています。
そのため、脂質の数値が高い方に対して、単に「食生活が悪い」と決めつけることはできません。
遺伝と生活習慣の割合はどのくらい?
LDLコレステロールについて、「遺伝が何%、生活習慣が何%」と一人ひとり明確に分けることはできませんが、過去の研究によってLDLコレステロールに個人差があることが明らかとなっています。
遺伝的な影響が強くても生活習慣改善が無意味ということではありません。
一方で、食事や運動に十分気をつけていても、遺伝的体質によってLDLコレステロールが高くなる方もいます。
生活習慣を改善しても数値が下がりにくい場合に、ご本人の努力不足と考える必要はありません。
家族性高コレステロール血症に注意
遺伝的な脂質異常症の代表が、家族性高コレステロール血症(FH)です。
FHは、生まれつき血液中のLDLコレステロールを肝臓で処理する能力が低く、幼少期からLDLコレステロールが高くなる病気です。一般人口のおよそ300人に1人程度いると推定されています。
次のような方は、FHの可能性があります。
- 未治療のLDLコレステロールが180mg/dL以上
- 若い頃からLDLコレステロールが高い
- アキレス腱が厚い、または黄色腫がある
- 両親や兄弟姉妹に高コレステロール血症の方がいる
- 家族に若くして心筋梗塞や狭心症を発症した方がいる
FHでは、生まれたときから高いLDLコレステロールにさらされるため、動脈硬化が早く進みます。食事療法だけで十分に下げることは難しく、早期から薬物療法が必要になることがあります。
LDLコレステロールを上げやすい食事
LDLコレステロールに最も影響しやすいのは、食品に含まれるコレステロールそのものより、飽和脂肪酸の過剰摂取です。
飽和脂肪酸は、次のような食品に多く含まれます。
- 肉の脂身
- バラ肉やひき肉
- 鶏肉の皮
- バターやラード
- 生クリーム
- 脂肪分の多い乳製品
- 菓子パンや洋菓子
- インスタント食品や一部の加工食品
- パーム油やココナッツ油を多く使った食品
これらを完全に禁止する必要はありませんが、食べる頻度や量を見直すことが大切です。
脂身の多い肉を赤身肉、魚、大豆製品などに置き換え、バターやラードをオリーブ油、菜種油などの不飽和脂肪酸へ置き換えると、LDLコレステロールの改善が期待できます。
卵は食べてはいけない?
卵黄や魚卵にはコレステロールが多く含まれますが、食事中のコレステロールに対する反応には大きな個人差があります。
一般的には、食事中のコレステロールよりも、肉の脂身やバターなどに含まれる飽和脂肪酸の方が、LDLコレステロールへ与える影響は大きいと考えられています。
そのため、LDLコレステロールが高い方は、まず飽和脂肪酸の摂取量を見直します。そのうえで、卵や魚卵を多量に食べている場合は、食べすぎを避けましょう。
「コレステロールの上限が設定されていないから、卵を何個食べてもよい」という意味ではありません。
中性脂肪が高い場合の食事
中性脂肪は、次のような生活習慣によって上がりやすくなります。
- 食べすぎ
- 甘い飲み物やお菓子
- 果糖を多く含む食品
- 麺類やパン、ご飯などの過剰摂取
- アルコール
- 運動不足
- 肥満や内臓脂肪
中性脂肪が高い方は、脂肪だけでなく、糖質やアルコールの摂取量を見直すことが重要です。
青魚に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸には、中性脂肪を下げる作用があります。サバ、イワシ、サンマなどを食事に取り入れましょう。
中性脂肪が500mg/dLを大きく超えるような場合は、急性膵炎の危険性が高まります。著しく高い場合は、生活習慣改善だけで様子を見ず、早めに医療機関を受診してください。

健康診断で脂質異常症を指摘されたら
健康診断で異常を指摘された場合は、「少し高いだけだから」と放置しないでください。
姫路市飾磨区の「きぬたにクリニック内科・循環器内科」では、健康診断で指摘された脂質異常症の心血管リスクの評価、食事・運動指導、薬物療法についてご相談いただけます。
「薬が必要なのか分からない」「生活習慣を改善しているのに下がらない」「家族にもコレステロールが高い人がいる」といった場合も、お気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。薬の開始・中止・変更は自己判断で行わず、必ず主治医にご相談ください。