- 2026年6月18日
- 2026年6月20日
肺炎球菌ワクチンについて
肺炎球菌ワクチンは、肺炎の原因となる代表的な細菌「肺炎球菌」による感染症を予防するためのワクチンです。
特に65歳以上の方では、肺炎は命に関わることがあるため、ワクチンによる予防が重要です。
- なぜ65歳を過ぎたら肺炎予防なの?
- 肺炎球菌とは
- 肺炎球菌ワクチンとは
- ワクチンの種類と各ワクチンの比較
- 2026年度の定期接種制度と費用
- ワクチンを選ぶ際のポイント
- 当院での肺炎球菌ワクチン接種の流れ
- よくある質問
なぜ65歳を過ぎたら肺炎予防なの?
肺炎は日本人の死因の第5位を占める重大な疾患です。
肺炎で亡くなる人の約98%が65歳以上であり、年齢が上がるにつれて死亡リスクは高くなり。70〜74歳では60〜64歳に比べて死亡者数が約5倍、75〜79歳では約9倍に跳ね上がります。
命に関わる重篤な合併症を引き起こします。
肺炎球菌は肺だけでなく血液や髄液に侵入することがあり、敗血症や髄膜炎などの思い感染症を引き起こすことがあります。これらを総称して「侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)」と呼びます。致死率が約8〜20%と非常に高く、発症すると極めて危険な状態に陥ります。
持病がある方はさらに注意が必要です
糖尿病や心臓病、呼吸器の病気がある方は、肺炎にかかるリスクが高くなることが知られています。
健康な高齢者と比較すると、
・糖尿病の方は約2.6倍
・心不全などの心臓疾患がある方は約3.1倍
・喘息の方は約3.2倍
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)の方は約3.6倍
肺炎を発症しやすいと報告されています。
生活の質(QOL)への深刻な影響
肺炎で入院生活を送ることは、単に肺が治るかどうかの問題に留まりません。
・身体機能の低下: 入院により足腰の筋肉が衰え、自立した生活が難しくなることがあります。
・認知症や他疾患の誘発: 入院を機に認知症が進行したり、心筋梗塞や脳卒中にかかりやすくなったりすることも報告されています。
このように、肺炎は「ただの風邪の延長」ではなく、高齢者の自立した生活や命を脅かす恐ろしい病気であるため、ワクチン接種や日々の予防が極めて重要とされています。
肺炎球菌とは
肺炎をはじめとするさまざまな感染症を引き起こす主要な原因菌です。
主な特徴や性質は以下の通りです。
「手強い」肺炎級球菌の性質と特徴
・強力なバリア(莢膜): 肺炎球菌は「莢膜(きょうまく)」という分厚い膜に包まれています。この膜がバリアとなって免疫細胞の攻撃を防ぐため、体内で退治するのが難しく、重症化しやすいという特徴があります。
・薬が効きにくい: 抗菌薬(抗生物質)が効かない「耐性菌」も登場しており、現代でも注意が必要な細菌です。
どのように感染するのか
・感染経路: 咳やくしゃみなどによる飛沫感染で広がります。特に子どもが保有している割合が高く、子どもから周囲の大人へ感染することもあります。
肺炎球菌ワクチンとは
肺炎球菌ワクチンとは、肺炎の主要な原因菌である「肺炎球菌」による感染症を予防し、感染した場合でも重症化を防ぐためのワクチンです。
ワクチンの目的と効果
・仕組み: 肺炎球菌は「莢膜(きょうまく)」という厚い膜に包まれており免疫の攻撃を防ぎますが、ワクチンはこの成分を体に覚えさせることで免疫力を高めます。
・予防できる病気: 肺炎だけでなく、菌が血液や髄液に侵入する侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)(敗血症や髄膜炎など)の予防に高い効果を発揮します。
ワクチンの種類と各ワクチンの比較
2026年4月より、日本における高齢者の肺炎球菌定期接種制度が大きく変更されました。現在、主な選択肢として比較検討されるニューモバックスNP (PPSV23)、プレベナー20(PCV20)、キャップバックス(PCV21)の3種類の違いについて解説します。
各ワクチンの主な特徴
各ワクチンは「対応する型の数(価)」と「免疫の仕組み」が異なります。
・PPSV23(23価多糖体ワクチン:ニューモバックスNP)
対応数: 23種類の血清型をカバーします。
仕組み: 莢膜(きょうまく)という菌の膜の成分のみで作られています。
持続性: 免疫記憶が作られないため、効果は約5年で低下し、再接種(5年おき)が必要とされてきました。
現状: 2026年3月末で定期接種の対象から外れ、現在は任意接種(自費)の扱いです。
・PCV20(20価結合型ワクチン:プレベナー20)
対応数: 20種類の血清型をカバーします。
仕組み: 多糖体にタンパク質を結合させた「結合型」で、免疫の司令塔であるT細胞を活性化させます。
持続性: 免疫記憶(メモリーB細胞)が作られるため、原則として1回の接種で生涯にわたる長期の効果が期待できます。
現状: 2026年4月より、65歳の方などの定期接種(公費助成対象)に採用された中心的なワクチンです。
・PCV21(21価結合型ワクチン:キャップバックス)
対応数: 21種類の血清型をカバーします。
仕組み: PCV20と同じ「結合型」で、免疫記憶を作ります。
特徴: 成人で問題となるタイプをより多くカバーするように設計された、最新の成人特化型ワクチンです。
現状: 2026年時点では**定期接種の対象外(任意接種のみ)**ですが、カバー率の高さから有力な選択肢とされています。
各ワクチンの比較まとめ
| 比較項目 | PPSV23 (ニューモバックス) | PCV20 (プレベナー20) | PCV21 (キャップバックス) |
| ワクチンの種類 | 多糖体ワクチン | 結合型ワクチン | 結合型ワクチン |
| 免疫記憶 | 作られない | 作られる | 作られる |
| 効果の持続 | 約5年(再接種が必要) | 長期(原則1回で完了) | 長期(原則1回で完了) |
| 定期接種(2026年4月〜) | 対象外(任意接種) | 対象(65歳など) | 対象外(任意接種のみ) |
| 国内カバー率(IPD※) | 約51% | 約50% | 約78% |
| 国内カバー率(肺炎※) | 約42.6% | 約42.8% | 約72.3% |
※IPD:血液や髄液に菌が入る重症の感染症。カバー率は2022-2024年の研究データ等に基づく。
2026年度の定期接種制度と費用
高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンの定期接種制度は、2026年(令和8年)4月1日より内容が大きく刷新されました。
現在の制度における主なポイントは以下の通りです。
使用されるワクチンの変更
2026年4月より、定期接種に使用するワクチンが「23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23:商品名ニューモバックスNP)」から、新たに「沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20:商品名プレベナー20)」に変更されました。
定期接種の対象者
定期接種として公費助成を受けて接種できるのは、以下の方々に限定されています。
・満65歳の方: 満65歳の誕生日前日から66歳の誕生日前日までの1年間が対象期間です。
・特定の持病がある満60歳〜64歳の方: 心臓、腎臓、呼吸器の機能に身の回りの生活が極度に制限される程度の障害がある方、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害がある方(該当する身体障害者手帳1級をお持ちの方、または同程度と診断された方)が対象です。
【重要な注意点】
・過去の接種歴: 過去に一度でも定期接種として(公費助成を受けて)肺炎球菌ワクチンの接種を受けたことがある方は、上記の年齢であっても定期接種の対象外となります。
・経過措置の終了: 以前行われていた「70歳、75歳、80歳…」といった5歳刻みの年齢の方を対象とする経過措置は、2024年(令和5年)度末をもって終了しました。現在は「65歳」の1年間が主なチャンスとなります。
姫路市にお住まいの方の費用
接種費用(本人負担額)
| ワクチンの種類 | 接種区分 | 自己負担額(税込) |
| PCV20 (プレベナー20) | 定期接種(公費助成あり) | 7,000円 3,000円 市民税非課税世帯 無料 生活保護世帯 |
| PCV20 (プレベナー20) | 任意接種 | 11,000円 |
| PCV21 (キャップバックス) | 任意接種 | 1,4000円 |
詳しくは、姫路市のホームページをご参照ください
姫路市高齢者肺炎球菌ワクチン定期予防接種のご案内
https://www.city.himeji.lg.jp/kurashi/0000003682.html
ワクチンを選ぶ際のポイント
・費用を抑えたい場合:65歳の方であれば、公費助成が受けられるPCV20(プレベナー20)が第一選択となります。一度の接種で生涯の効果が期待できるため、利便性も高まっています。
・より高い予防効果を求める場合:自己負担にはなりますが、成人で増加している血清型(15A、35Bなど)をカバーし、肺炎・重症感染症(IPD)ともに最も高いカバー率を誇るPCV21(キャップバックス)が推奨される傾向にあります。
・過去に接種歴がある場合:PPSV23を過去に受けた方は、1年以上あけてPCV20またはPCV21を任意接種することで、より強力な免疫記憶を獲得できるとされています。
当院での肺炎球菌ワクチン接種について
当院では、プレベナー20(PCV20)とキャップバックス(PCV21)を取り扱っています。
当院の帯状疱疹ワクチン接種は完全予約制です。
接種をご希望の方は、まずご予約をお願いいたします。
ご予約は、お電話もしくは来院による受付での申し込みで受け付けています。
ご予約の際に、接種を希望されるワクチンをお伝えください。
当院ではワクチンを予約後に取り寄せています。そのため、申し込み当日の接種はできません。
ご予約日に、予防接種券・予診票・本人確認書類・お薬手帳をご持参ください。非課税・生活保護世帯の方は無料証明書類もお忘れなくご持参ください。
医師による問診・説明の後にワクチンを接種します。
接種後は体調確認のため、院内で15分〜30分しばらく院内で様子を見ていただきます。体調に問題なければご帰宅いただけます。
よくある質問
Q. 肺炎球菌ワクチンを接種すると肺炎にはかかりませんか?
すべての肺炎を防げるわけではありません。
しかし肺炎球菌による肺炎や重症感染症を予防する効果が期待できます。
Q. インフルエンザワクチンと同時接種できますか?
可能です。肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンは、どちらも注射生ワクチンではありません。現在の日本のルールでは、異なる種類のワクチンを接種する場合、注射生ワクチン同士を接種するときは27日以上あける必要があります。それ以外の組み合わせでは、一律の日数制限はありません。
Q. 過去に肺炎球菌ワクチンを接種していますが、再接種は必要ですか?
接種したワクチンの種類や時期によって異なります。
接種記録をご持参のうえご相談ください。