• 2026年7月20日

家庭血圧の正しい測り方

循環器専門医が分かりやすく解説

姫路市飾磨区の「きぬたにクリニック内科・循環器内科」院長の絹谷です。

当院には、多くの高血圧患者さんが通院されています。

高血圧の治療や管理において、欠かすことができないのが「家庭血圧」です。
血圧は、緊張、運動、食事、気温など、さまざまな要因によって変動します。
病院で緊張して血圧が高くなる「白衣高血圧」がある一方、病院では正常でも家庭では高くなる「仮面高血圧」もあります。

このため、普段の生活環境で測定した家庭血圧は、患者さんの本来の血圧を知るための大切な情報です。
ただし、姿勢や測定する時間が毎回違うと、測定値を正確に比較できません。

皆さんは、ご自宅でどのように血圧を測っていますか?

今回は、家庭で血圧を正しく測るためのポイントを、循環器専門医の立場から分かりやすく解説します。

血圧計は「上腕式」がおすすめです

家庭用血圧計には、主に腕にカフ(腕帯)を巻く「上腕式」と、手首に巻く「手首式」があります。

高血圧の診断や治療に用いる家庭血圧を測定する場合は、原則として上腕式血圧計をおすすめします。

上腕式血圧計

心臓に近い上腕動脈で測定します。そのため、手首の位置による影響を受けにくく、比較的安定した測定値を得やすいことが特徴です。

手首式血圧計

小型で持ち運びやすいという利点がありますが、測定するたびに手首を正確に心臓の高さへ合わせる必要があります。この「心臓の高さに合わせる」という動作は、簡単そうに見えて、実際には意外と難しいものです。

日々の健康管理や治療効果の判定に使用するのであれば、上腕式血圧計を選ぶとよいでしょう。

正しい血圧測定の姿勢

血圧を測るときは、次の4つのポイントを意識して姿勢を整えましょう。

1.背もたれのある椅子に座る

椅子に深く腰掛け、背中を背もたれに預けます。

前かがみになると腹部に力が入り、血圧が高めに出ることがあります。背筋を無理に伸ばす必要はありません。体の力を抜き、楽な姿勢で座りましょう。

2.足を組まず、両足を床につける

脚は組まず、両足の裏を床につけます。

足が床に届かない場合は、足台などを使用してください。測定中に脚へ余計な力が入らない姿勢をつくることが大切です。

3.測定する腕を台の上に置く

測定する腕は、手のひらを上にして、テーブルや台の上に置きます。腕や肩の力を抜き、肘から前腕までを安定させましょう。

腕を自分の力で持ち上げた状態では、筋肉に力が入り、正確な値が出にくくなります。
必要に応じて、クッションや折りたたんだタオルを使って腕を支えてください。

4.カフの中心を心臓の高さに合わせる

カフの中心が、心臓と同じ高さになるように調整します。目安は胸の中央付近です。

カフが心臓より低いと血圧は高めに、心臓より高いと低めに測定される可能性があります。テーブルが低い場合は、腕の下にクッションやタオルを置いて高さを調整しましょう。

カフの正しい巻き方

カフは、原則として素肌、または薄手の衣服の上から巻きます。厚手の服の上から巻いたり、袖をまくり上げて腕を強く締めつけたりするのは避けてください。

カフの下端は、肘の曲がる部分から1~2cmほど上に合わせます。動脈位置を示すマークが付いている場合は、血圧計の説明書に従って位置を合わせましょう。

締めつけ具合は、カフと腕の間に指が1本入る程度が目安です。緩すぎても、きつすぎても正確に測定できません。

また、家庭血圧は基本的に毎回同じ腕で測定します。左右の腕で血圧に大きな差がある場合は、自己判断せず医師にご相談ください。

測定前は1~2分間安静にしましょう

歩いた直後や階段を上った直後に測定すると、運動の影響が残っていることがあります。

椅子に座って姿勢を整えたら、すぐに測定ボタンを押さず、まず1~2分間静かに座って呼吸を落ち着かせましょう。

測定中は、次のことに注意してください。

  • 話をしない
  • 体や腕を動かさない
  • スマートフォンを操作しない
  • 測定結果を気にして力まない

会話や動作、緊張によっても血圧は変動します。測定中は、できるだけ静かに過ごしましょう。

血圧を測る時間

家庭血圧は、朝と夜の1日2回、できるだけ毎日同じ条件で測定します。

朝の測定

朝は、次の条件で測ります。

  • 起床後1時間以内
  • トイレを済ませた後
  • 朝食を取る前
  • 朝の薬を飲む前
  • 座って1~2分安静にした後

夜の測定

夜は、原則として就寝前に測定します。

ただし、入浴や飲酒の直後は血圧が変動しやすくなります。就寝直前に入浴や飲酒をする習慣がある方は、その前に測定するなど、なるべく毎日同じ条件にそろえましょう。

血圧は何回測ればよい?

朝と夜、それぞれ原則として2回測定し、すべての測定値を記録します。

1回目の値が高かったからといって、低い値が出るまで何度も測り直してはいけません。高い値を消したり、都合のよい値だけを選んだりせず、ありのまま記録することが大切です。

1回しか測れなかった日は、その値を記録すれば構いません。完璧に測定することよりも、できる範囲で継続することを優先しましょう。

測定前に避けたいこと

血圧は、日常生活のさまざまな要因によって変動します。測定の直前は、次のような行動を避けましょう。

  • 喫煙
  • 飲酒
  • コーヒーやエナジードリンクなどのカフェイン摂取
  • 激しい運動
  • 入浴
  • 食事
  • 寒すぎる部屋での測定
  • 尿意や便意を我慢した状態での測定

いつもと違う条件で測った場合は、「飲酒後」「寝不足」「頭痛あり」など、そのときの状況も一緒に記録してください。診察時に血圧の変化を判断するための重要な手掛かりになります。

測定結果はすべて記録しましょう

家庭血圧は、1回の数値だけで判断するものではありません。同じ条件で継続して測定した記録から、血圧の全体的な傾向を確認します。

血圧手帳やスマートフォンのアプリなどに、次の項目を記録しましょう。

  • 測定した日時
  • 最高血圧
  • 最低血圧
  • 脈拍
  • 服薬状況
  • 体調や生活上の変化

メモリー機能やスマートフォン連携機能がある血圧計を利用すると、記録を続けやすくなります。受診時には記録を持参し、主治医に見せてください。

「測るたびに数値が違い、どれを信じればよいのか分からない」と悩む方も少なくありません。しかし、血圧は、動いたり考え事をしたりするだけでも変動する繊細なものです。多少のばらつきがあっても構いません。

循環器専門医は、1日だけの高い値を見て判断するのではなく、朝と夜の違いや日々の変化、生活状況などを含めた全体の流れを見て評価します。

数値を選ばず、ありのままの記録を見せていただくことが、適切な診断や治療につながります。

「高血圧の診断基準」と「治療目標」は異なります

家庭血圧の平均が135/85mmHg以上の場合、高血圧が疑われます。

一方、日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、治療を受けている一般的な成人の降圧目標として、家庭血圧125/75mmHg未満が示されています。

つまり、高血圧と診断するための基準と、治療によって目指す目標値は同じではありません。

また、実際の治療目標は、年齢、持病、体調、薬の副作用、ふらつきの有無などを考慮して個別に判断します。測定値だけを見て薬を中止したり、量を変更したりせず、必ず主治医に相談してください。

まとめ|大切なのは「同じ条件で続けること」

家庭血圧を正しく測るためのポイントを、もう一度確認しましょう。

  • 上腕式血圧計を使用する
  • 背中を背もたれに預ける
  • 足を組まず、両足を床につける
  • 腕の力を抜き、手のひらを上にする
  • カフの中心を心臓と同じ高さにする
  • 測定前に1~2分間安静にする
  • 測定中は動かず、話さない
  • 朝と夜に原則2回ずつ測る
  • すべての測定値を記録する

血圧は日によって変動するため、1回の数値だけで一喜一憂する必要はありません。同じ条件で測定を続けることが、ご自身の本当の血圧を知るための第一歩です。

血圧が高い状態が続く場合、測定値のばらつきが大きい場合、左右の腕で大きな差がある場合は、家庭血圧の記録を持参して医療機関へご相談ください。

姫路市飾磨区の「きぬたにクリニック内科・循環器内科」では、家庭血圧の評価をはじめ、高血圧の診断・治療、生活習慣の改善についてご相談いただけます。

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。薬の中止や変更は自己判断で行わず、必ず主治医にご相談ください。

参考資料

日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」

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